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【コラム】いじめ保険報道を巡る誤解について

どうやら東京海上日動の「いじめ保険」が巷を騒がせているようです。
昨日たまたまTVのニュースで報道されていた「いじめ保険」のニュースは、私も驚きました。

今日お会いしたお客様も丁度視聴されておられたようで、
「いじめに保険なんてかけられるの?イジメられた方が転校する費用を補償するなんて世も末よね。」と仰っておられました。

プレスリリース発表後、ネットニュースで拡散されて賛否の声が上がっており、概ね上記のような感想をお持ちになられる方も多くおられるようなのですが、内容について誤解されている方も多くいらっしゃるように見受けられます。
少なくとも私は「いじめ保険」に概ね好印象を持ったので、本コラムでその理由を記してみたいと思います。

この記事を読んで頂いた皆様に「いじめ保険」ではなく、「いじめ解決保険」だと、ご認識頂けると嬉しいです。

いじめ保険ってなに?

いじめは今も尚、社会問題として取り上げられています。
中でも学校でのいじめは、その被害者が幼い子供たちであることから深刻さが増しています。そんな中、注目されているのが「いじめ保険」です。この保険について詳しく見ていきます。

まず、今回のいじめ保険、正式には商品名を「トラブル対策費用補償特約」と言います。
学校法人やPTAが東京海上日動の団体保険(大体の場合が、生徒の怪我等を補償するものです)に加入している場合に、希望する保護者が個別に加入すれば、いじめに遭った際に、臨床心理士へのカウンセリングや転校に伴う新たな制服や教材の購入費など、1回あたり最大20万円まで支払うという内容だそうです。

保険料は、月額120円(※契約条件によって異なります。※セットでご加入いただく「弁護士費用等補償特約(人格権侵害等)」を合わせた保険料となります)です。案外安いと思いませんか?


引用元:東京海上日動火災保険株式会社 いじめやネットトラブルに対応する「トラブル対策費用補償特約」の販売開始

いじめの実態

東京海上日動のプレスリリースでは
「近年、学校等におけるいじめや、スマートフォン普及に伴い SNS 等のネットトラブルが社会課題となっています。小・中・高等学校および特別支援学校における 2021 度のいじめ認知件数は、
2010 年度の約 8 倍の 615,351 件に上り、インターネット違法・有害情報相談センターへ寄せら れた 2021 年度の相談件数は 2010 年度の約 5 倍になる等、いじめやネットトラブルの件数は大きく増加しています。」とあります。

結構な件数なので、ちょっと調べてみました。上記画像はプレスリリースのリンク先よりも見やすい資料があったので、転載しております。詳細は「 いじめの状況及び文部科学省の取組について 文部科学省 初等中等教育局 」をご参照ください。

小学校に限って言えば、いじめ件数が50万件超え!全国の小学校の88.1%がいじめを認知してます。
データを均すと13人に1人はいじめ被害にあっている計算ですので、ざっと35名1クラスとしたら、2件のいじめが発生している事になります。強烈ですよね。

それに対して、カウンセリング等の実施件数は上記の通りです。
これについては多くを語らないでおきますが、件数を見て驚きました。
皆様はどのように感じられましたか?

背景を調べてみて、いじめの発生件数を考えると、保険があってもおかしくない程の状況かな?と感じました。

引用元:令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について (mext.go.jp)
引用元:いじめの状況及び文部科学省の取組について 文部科学省 初等中等教育局

ところがネットで炎上してしまいました…


Twitterで話題になったのは読売新聞オンラインの2023年3月30日付けの記事「いじめによる転校費用を補償、東京海上日動が特約開始へ…ネットトラブルにも対応」だと思われます。めざまし8等の全国ネットの情報番組でも取り上げられたようですね。

2023年3月30日付 読売新聞オンラインより転載

炎上した理由としては「なんでイジメられた側が転校するねん!」という部分で抵抗を感じられる方が多かったんだろうな、と思います。

保険料負担について

「なんで保険料を被害者が負担するんや!」「保険料は学校負担でええんちゃうんか!」というお声もありましたが、学校に被保険利益※が無い、すなわちいじめが発生した時に学校に直接的な被害がないので保険事故とする事が難しいのかな?と思います。

したがって親御さんが保険料負担を頂くという部分は、現状止む無しかなと考えます。

※被保険利益とは 保険の対象(目的物)に偶然に事故が発生すること事により、ある人(被保険者)が損害を被るおそれがある場合における、ある対象とある人との間に存在する利害関係のことをいいます。
例えば、私の所有する住宅にお隣さんが火災保険をかけて、私の家が燃えたらお隣さんに保険金が支払われる。という事が出来ないように、損害保険契約が有効に成立するためには、被保険利益の存在が前提となります。

学校がいじめを隠蔽したら、保険はおりないの?

毎日放送 よんチャンTV 4月4日放送 より

「補償を受けるには、警察に提出した被害届や学校との相談実績を証明する書類が必要になる。」に対して「学校がいじめを隠蔽したら、保険金が下りないってコト?!」というお声がありました。

至極ごもっともなのですが、保険会社としても、保険事故として取り扱う以上は事実確認が欠かせないので「相談実績」等は確認するようですが「学校によるいじめ認定は不要」だそうです

皆様のお持ちのスマートフォンで面談内容を録音し、その録音データが物証になると思えば、そこまで負担感はないのではないでしょうか。

いじめ保険に加入してるのがバレたら、いじめられちゃうかも?

いじめっ子に対していじめ保険の加入有無がバレるかどうかですが、
「自分から言わない限り、バレる事はない。」といえます。

このいじめ保険、加入条件は「学校法人やPTAが東京海上日動の団体保険に加入している場合」に限るのですが、申込手続きは大体の場合、パンフレットに付属している申込書兼払込票に加入プランを記入して、銀行に保険料を振り込む格好ですので、先生やママ友にも加入プランがバレる事はありません。

もちろん契約者や加入内容は個人情報と言えますので、我々も契約者以外にお伝えする事は出来ないようにルールが定められており、お客様の情報はしっかりとプロテクトされています。

とはいえ、ほんまに注目してほしいのはソコじゃない

東京海上日動 プレスリリースより

個人的に今回のプチ炎上は「いじめによる転校費用を補償」の見出しが良くなかったなぁ…と思います。取扱う側からすると、本当に注目してほしいのは「弁護士費用等補償特約(人格権侵害等)」の方ですよと。

皆様が「弁護士特約」と耳にすると、一般的に自動車保険を思い浮かべると思います。


以前、弊コラム「もらい事故の被害に遭われたら(テキストをクリックで遷移します)」でも述べましたように、そもそもの成り立ちはもらい事故(無過失事故)の際に、お客様に代わって弁護士が相手方とやりとりする為の物…だったのですが、変わりゆく社会情勢に合わせて、どんどん進化しているんです。

詳細はコチラからご確認ください(【超保険】弁護士費用特約の補償内容を教えてください。

これまでは自動車事故にしか対応していなかった「弁護士費用特約」ですが、
日常生活での被害事故にも対応した「日常生活型」では
・歩行中に自転車に衝突されて怪我をした、という被害事故
・マンションの上の階から水漏れが発生し、家財が濡れて壊れたという被害事故
等も対象となる上に、
「人格権侵害型」では「不当行為による自由、名誉、プライバシーまたは肖像権の侵害を受けることにより、精神的苦痛を被った場合」または「痴漢、ストーカー行為、いじめまたは嫌がらせを受けることにより、精神的苦痛を被った場合」の弁護士費用・法律相談費用等も補償の対象となります。


引用元:【超保険】弁護士費用特約の補償内容を教えてください。


今回の補償のキモは弁護士+費用保険。加害者への損害賠償請求も出来ます!

トラブル対策費用補償特約 について、プレスリリースより抜粋

FNNプライムオンライン「先生に言っても無駄…」子どもを“いじめ自殺”から守るために親ができること【広島発】
の中で、いじめ被害にあった女児のお母さんがこのようなお話をされています。

「学校に相談して全く聞いてもらえなかったっていうのが一番のショックでした。子どもだけでは絶対解決できないと思うんですよね。しかも親だけでも解決は、なかなか難しい。先生方の理解がないと難しいですね。」

かなり多くの親御さんが、同様の事例で頭を悩めているんじゃないかなと思います。
また、仮に先生方に理解があったとしても、我が子がいじめにあった場合に、冷静に加害児童の親や学校と冷静に話し合いが出来るものでしょうか?

やはり、難しいのではないでしょうか。

そんな時に、弁護士を立てて
・法律相談を行い、加害児童や学校への対応等、解決策を提示してもらう
・弁護士が加害児童や学校側に対して文書を送付したり、損害賠償請求を行う
などの手段が取れるとなれば、心理的な負担も大きく軽減できると思います。

例えば、自分の子供がいじめにあって
・怪我をさせられた
・持ち物を壊された
・SNSで悪質な書き込みをされた…というような場合。

「先生に話をしたけど、状況が好転してるようには思えない…」
「他に相談できる場所もよくわからない…」
となったとしても、この保険があれば、

弁護士に相談する費用が保険からおりますよ。
あんまり相手が悪質だったら、学校に相談したり、

警察に被害届を出してください。
相手を訴えて、損害賠償請求する事も可能ですよ。

→ここまでが弁護士費用特約(人格権侵害型)

転校した場合の費用や、お子様の心のケアの費用も担保しますよ。

→ここの部分が、いわゆる「いじめ保険」(トラブル対策費用補償特約 )

という事なんです。

あくまで先に「弁護士がいるんだ」という事をもっとニュースで協調してほしかったなと。
弊社でも、実際にいじめの事例で弁護士に相談されたお客様がいらっしゃいました。
これまでは、ヒトやモノに物理的なダメージがあって初めて保険事故となりましたが、
いじめによる精神的苦痛でも補償の対象という事で、弁護士に繋がるハードルがグッと低くなりました。

ネットの書き込みにある通り
・いじめをさせない環境作りが大事
・被害者が追いやられる社会をどうにかしよう
めっちゃ正論、仰る通り!…なんですが、イジメなんて学校だけのものじゃなく、「職場いじめ」なんて名前を変えたパワハラがあったりしますよね。

大人でも対処に苦慮する問題を、年端もいかない子供が被る事を考えたら、被害者になってしまった時に弁護士へのハードルが心理的にも金銭面的にも低い方が、良いに決まってると思いませんか?

いじめ・ダメ・絶対

毎日放送 よんチャンTV 4月4日放送 より

私が見たニュースでは、その後追加でこのような文言が読み上げられましたが、
これだけだとなんのこっちゃ?ですが大体の場合「いじめイコール、いじめっ子が故意に行った不法行為」ですから、保険の考え方としては免責となります。
したがって「いじめっ子が転校する事になってもその費用は保険でおりませんからね」という事を言いたかったのかな?と推察します。

最初にも書きましたが、特約保険料はたったの月120円です。
親でも先生でも教育委員会でもどうにもならなかったとしても、弁護士を呼んで「ひと月ジュース1本のコストで、我が子をいじめる憎っくきイジメっ子に法の力でパンチを繰り出せる」と思うと、私はそんなに「いじめ保険」が悪いものではないように感じます。

親御さんとしては、一刻も早く自分の子供が溌溂と生活出来る状態に戻るという事が一番の願いなんではなかろうか、と思います。
そのお気持ちに寄り添い、応援する為の保険です。
せっかく良い商品なのに、いじめをダシに商売してると思われちゃった事が、本当に勿体ない…

この「トラブル対策費用補償特約 」は、我々代理店が一般カスタマーに向けて取り扱いが出来ませんが、「弁護士費用特約(人格権侵害型)」は自動車保険や火災保険にくっつける事が出来ます。
気になられた方は是非一度、ご契約内容を確認されてみてはいかがでしょうか。